後世に残したいコピペ集

471 名前: 水先案名無い人 投稿日: 2006/03/13(月) 14:53:34 id:boypnuj70


ある昼下がり。 私は森に迷ってしまった。
娘ともはぐれてしまった。どうしよう?
* * *
その頃、小鳥のさえずる森の中を、一人の少女が走っていた。
「おかあさん!どこにいるの?」
叫ぶ少女。だが答えは無い。
そのうち少女は、とある家の前に辿り着いた。
「ここね!ここにいるのね!」
そう言って少女は扉を開けた。
* * *
私は森をさまよい続けた。夜になりお腹も減ってきた。
そんな中、一軒のお店を見つけた。
「ここはとあるレストラン」
変な名前の店だ。
私は、店長が勧めてくた人気メニューの「ナポリタン」を注文する。
ふと見ると、テーブルの上にポツリと日記帳が置かれている。
見覚えのある日記帳だ。何だったろう?
私は、そっと手に取り、読み始めた。
* * *
5月16日
明日は楽しい楽しいクリスマス。
プレゼントがいっぱい。とっても楽しみ。
5月17日
サンタさんがこない。
サンタさんがこない。
サンタさんがこない。
* * *
472 名前: 471つづき 投稿日: 2006/03/13(月) 14:57:31 id:boypnuj70

数分後、ナポリタンがくる。
だが私は、日記帳を放すことができなかった
私は食べながら、読み続けた。
* * *
5月18日
昨日はとっても楽しかった。
サンタさんにいっぱいプレゼントもらっちゃった。
でもおかしいなぁ。そのプレゼントどこに置いたんだろう?
* * *
そうこれは…私の日記だ…。
私は母親を亡くした娘のため、生前の母親に似せて作られたアンドロイド。
これは、私が作られたばかりで調整されている間、
生活の訓練の為に書かされていた日記だ。
イベントや日付に対する認識がまだ甘く、文法も幼稚だった。
しかし今は違う。それにこんなものは、とっくに破棄されていると
思っていた。大体、なぜここにあるのだろう。
と、私は料理の味が変なことに気づいた。
……なんか変だ。しょっぱい。変にしょっぱい。
気づくと、私は目に涙をいっぱいためていた。
頭が痛い。泣きすぎたようだ。こんなはずはない。どうして?
アンドロイドの私が、泣くはずはない。
いくらヒトと同じモノからエネルギーを摂取し、
ヒトと同じ姿だからと言って、こんなはずは。
私は苦情を言った。料理に、おかしな薬品でも入っていたのでは?
私は店長にいろいろ訊ねようと、立ち上がろうとした。だが…
「あ…あれ?」立てない。それどころか、意識が混濁してきた。
「料理に…やっぱり何か…」
私は娘の事を思いながら、機能を停止していった。
* * *
473 名前: 471つづき 投稿日: 2006/03/13(月) 15:00:05 id:boypnuj70

少女:「何とかしてよね。これで3回目よ」
店長:「すいません作り直します。御代も結構です。」
ここは、森の中のとある研究所。ベッドには、横たわった若い女性の身体。、
一人の男と少女が会話をしている。
「頭も悪くて料理もヘタ、娘の事を過剰に心配するだけのこの女を、
理想の母親に改造してって頼んだのよ。ちゃんとお金も払ったし、
あんたのスケベな要求にも応えてあけだでしょ。仕事はちゃんとしてよ」
「はあ、しかし生きた人間のロボット化というのは、実は結構
難しくて。やはりヒトの脳は難しい。何度もいろいろなショックを
与えたせいで、この女性はもう正常な思考はできなくなっていますよ。」
「だったら脳味噌なんか取り替えちゃえば良いでしょ。どうせ大して
使ってないんだもん。もう、最近は特に味覚が狂ってて、食事のまずいこと。
料理に全然塩とか使わないのよ。自分がサビるからかしら」
「とにかく、もっとましな生体を作りますから。ちょっとお待ちを」
* * *
数分後、ナポリタンがくる。
私は眠っていたようだ。私は食べる。今度は平気みたいだ。
「美味しい?お母さん」
ふと見ると、横に娘がいる。
「よかった。昨日と同じ料理だけど、今度は味覚がちゃんとしたのね」
「何の事?」
「何でもない。食べたら、帰ろう。」
「ええ…お母さん、何でこんな所にいるのかしらね」
* * *
474 名前: 471つづき 投稿日: 2006/03/13(月) 15:05:31 id:boypnuj70

「でもお嬢さん、注意してくださいよ。
今回の改造で、もう人体への負担はギリギリなんです。
お母さんの生体としての脳は、ほとんど破壊されています。
ヒトとしての自分が消滅する時を、無意識に自覚されているかも知れません。
見た目は同じでも、全身もう人工皮膚。
ほとんど金属色になっている肉体に、本当は気づいているかも知れません。
くれぐれも慎重に。何が起きるか解りませんからね。」
* * *
私は、また日記がつけたくなりました。なんでかな?
9月33日
時計の針がね、ゆっくりゆっくり私に近づいてくるの。
12月65日
今日ね、お外に出てみたの。
そしたら人がいっぱいいたんだよ。
いっぱいいっぱいいたんだよ。
でもみんな変な色だった。なんでかな?
* * *
少女は日記帳を閉じた。
違法に脳と肉体の改造手術を施され、思考及び情緒が
完全に破壊された女性による大量虐殺が行われて数日後。
今朝起きて読んだ、それは少女の日記だった。
確かに少女の文字。だが書き込んだ覚えのない文章だった。
少女は気付いてしまった。
そう。少女は、気付いてしまったのだ…。
彼女もまた知らない内に、あの店長に改造されていた事に。
そして狂いだしている事に。
あんなに軽蔑していた母親の、待ちに待った最期。
血まみれの、バカみたいな顔。最後まで笑い続けていたケタケタという声が、
いつまでも少女の耳に響き渡っていた。