後世に残したいコピペ集

204 名前: なまえをいれてください 投稿日: 04/12/21 17:19:53 id:sCQCt6VG


引っ越した先のぼろアパートには、ありがたくない先住者がいた。
戦災をのがれて生き残ったという、古き昭和の面影を残すこの建物にじつにぴったりな、
うらさびしいその存在。


荷物をはこびこむとき、そいつは部屋のすみに座ってうつむいていた。
かべのほうを向いて。まるで無言の抵抗をこころみるように。


こころのなかで、
「ごめんよ。君はもうこの世界の住人じゃないんだよ」
と、手をあわせながら作業をすすめた。

205 名前: なまえをいれてください 投稿日: 04/12/21 17:21:18 id:sCQCt6VG

帰るといつもそいつは部屋にいた。かべのほうを向いて、かなしそうにしていた。
寝るときもそいつは部屋のすみっこにいて、べつになにか悪さをするわけでもなかった。
もしかしたら、部屋にいくらか残ったままだった、
そいつのものと思われる遺留品が心残りで、成仏できないのかもしれない。
残念だが、捨てさせてもらったよ。ちゃんとお寺で供養までしたんだよ。
しかし、そいつはくぐもった声で、
「ここはおれの部屋だ」
とくりかえし言うだけ。


「君はここにいちゃいけないんだ。君の帰るべき家は、」
と説いて、窓の外、空の向こうを指差すと、そいつは肩をゆらして泣きじゃくった。


そのとき、ハッとこころあたりがして、
引き戸をあけて廊下へとびだし、すすけた部屋番号の木札を見た。


部屋をまちがえてた。


ゴメン。ほんとにゴメン。なんてあやまったらいいのか。
すてちゃったよ、君のもの。どうしよう。